SNSと著作権②
前回の続きになります。今回は事案の簡単な紹介に留めます。
今月(2025年10月9日)の判決についてですが、わたしも報道で知る限りにはなりますが、原告は令和5年、自身のアカウント画像と過去に投稿した特定の俳優を応援するツイート(投稿)がスクリーンショット(スクショ)され、別のインターネット掲示板に転載されてしまいました。
そして、そこ(掲示板)で「発想がイミフ(意味不明の意味」と揶揄されました。原告はこのスクショの無断転載が著作権侵害であるとして約200万円の損害賠償を求めました。これについて東京地裁は原告の投稿については「個性が表れたもの」「思想や感情を創作的に表現したもの」として著作物に当たると判断し、被告に賠償(約40万円)を命じました。
・過去の「スクショ」事案
①令和3年12月10日、東京地裁はSNS上で他人の投稿をスクショして自分の投稿に添付して投稿することについて「著作権侵害」との判断を下しましたが、令和5年4月13日の控訴審(知財高等裁判所)ではスクショ添付という引用方法も「著作権法上の引用」に当たる可能性があるから元のツイート主の著作権を侵害することが明らかであると認めるに十分とは言えないとして先の東京地裁の判決を取り消しました。(判決文:https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-92019.pdf)
②写真を添付した投稿について、それを別の人がその写真を無断で複製してその写真を含むツイートを投稿したのち、また別の人達がリツイート。
この時にSNSの仕様によって元の写真の一部がトリミングされ元の投稿者が写真に表示していた氏名が表示されなくなってしまった事案について、リツイートであっても著作者人格権(氏名表示権)を侵害するという判断がありました。(最高裁判決:https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-89597.pdf)
用語:著作人格権
| 著作権法では著作者の権利として「著作者人格権」を認めています。これは著作者の人格的利益(精神的利益)を保護する権利で ①公表権:未公表の自己の著作物について公表する・しない、公表するときの時期を決定できる権利。 ②氏名表示権:著作物を公表するときに著作者名を表示するか・しないか。する場合に実名または変名(ペンネームなど)のいずれかで表示するかを決める権利。 ③同一保持権:自分の著作物やその題名等を、著作者の意に反して無断で変更、切除、その他改変をされない権利。 以上3つからなります。人格権であるため、著作者のみに一身専属的に帰属し、財産権である著作権と異なり譲渡、相続はできません。いずれ機会があるときに著作権の譲渡と著作者人格権の関係について取り上げられたらと思います。 |
①の事案だけ見ると、スクショして投稿することに別に問題はなさそうだ。と思えるかもしれませんが、これはその時々の具体的な事情によるとしか言えません。これらについて詳細をつきつめるととんでもない長文記事になってしまうので今回はあくまで紹介に留めておきますが、SNS時代において、「著作権」はものすごく身近なものになってきた。という実感はお持ちいただければと思います。
また、著作権だけの問題だけでなく、リツイートの内容によっては別の問題(名誉棄損など)も生じる可能性もあると個人的には考えています。
気軽に投稿できるだけに、慎重に投稿していきたいものです。SNS時代における1つの指標かもしれません。
